水面に浮かぶ古き書庫

いろいろ書いたりとか

2020-01-01から1年間の記事一覧

『小説家になろう』さんでオリジナル小説の掲載を始めました。

いつも弊ブログ、『水面に浮かぶ古き書庫』及び、ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』へアクセスしていただきまして、ありがとうございます。 『刹那の夢と嘘の玩具』は以前運営していたサイト、『ポケモンセンターin19番水道』で掲載しておりまし…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#16-4

#16 絶望。 4.刹那の夢 言葉を失ったまま、瑞穂は立ち尽くしていた。 遺されたメモリーに記録されていた真実は、少女にとってあまりにも残酷で、非道く救いようのないものだったから。 微動だにしなかった少女の身体が、小刻みに震え始めた。乾ききり色…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#16-3

#16 絶望。 3.壊れゆく心 ***2045/1/12*** 薄灰色の壁にかけられた時計が、真上に振り上げていた時針を、一瞬だけ震わせ、零時を過ぎたことを伝えた。 祐司は口をあけ絶句したまま、眼前に置き捨てられた少女を見つめていた。凍りついた…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#16-2

#16 絶望。 2.終わる世界 ***2039/4/2*** 覚めることの無い悪夢に堕ちたと、この時思った。その悪夢は予見することも、避けることも、防ぐこともできなかった。だがそれは、たった数行の文章、たった数十文字に過ぎない文言から始ってい…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#16-1

#16 絶望。 1.禁じられた言葉 男は、扉を開いた。それは本来、開く筈の無い、外からは開かれる予定の無い扉だった。何故なら、扉はその内に潜む者の手によって巧妙に隠蔽され、誰の眼にも触れることは無かったから。 男は白衣を纏っていた。年は若く、…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#15-5

#15 天使。 5.人間の価値 「十歳の誕生日。その日に私は殺された。兄上様の手によって」 ラツィエルは瑞穂を、その澄んだ瞳を見つめながら、ゆっくりと語った。腰まで伸びた銀髪に、雪の粉が舞い降り、雫となって頬や首筋を伝うと、白と紺の巫女装束を…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#15-4

#15 天使。 4.喪失の子羊 風は感じない。そのせいか、雪はゆっくりと、まっすぐ闇の中を落ちて行く。白い首筋に、肩に、握り締められた手の甲に、綿のような雪が降り、それは触れた瞬間にとろけて肌を濡らした。「行こうか、キーちゃん」 瑞穂は傍らに…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#15-3

#15 天使。 3.白炎の堕天使 ベランダから見上げる夜空に、白い霞が浮かび上がっては消えていく。星は瞬かず、月も闇に食われた空の下では、その輪郭は、より一層はっきりと認識できる。 塚本大樹は、無言のまま深く息を吐き、眩しげに目を細めた。軽く…