水面に浮かぶ古き書庫

いろいろ書いたりとか

2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#8-3

#8 無力。 3.哀しき強襲 天井の窓から、夕焼けの赤い光が注ぎ込んできた。 大広間の中央に位置する食卓の上に、色取り取りの食事が並べられている。 暗い面持ちで席に着き、サリエルは溜息をついた。3日前の、あの喧嘩騒動から、妹とは口を利いていない…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#8-2

#8 無力。 2.闇の再来 湖のほとりにそびえる巨木の下で、呻きに似た声が聞こえた。ひときわ大きなメスのリングマが、巨木に支えられ、苦しそうに身を捩っているのだ。湖まで案内してきた、一回り巨大な野生のリングマが、心配そうに彼女を指さしながら、…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#8-1

#8 無力。 1.月夜の咆哮 暗い地下の世界から抜け出て、少年はシャマインの庭で満月の浮かぶ星空を見上げた。月の光に照らされて、足下に広がる池の水が銀色の光を浮かべている。背後からは滝の音が、少年の心を見透かしたようにざわめいていた。 月は孤…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#7-3

#7 視界。 3.最期の景色は 「ずるいよ。私たち……」 血の気の失せた顔で、瑞穂はぽつりと呟いた。冬我は、瑞穂の表情を見つめたまま、何も言わない。普段よりも更に白くなった瑞穂の幼顔が、先程とは違う不思議な、上品な妖艶さを帯びていた。 ごくり、唾…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#7-2

#7 視界。 2.神の殺気に 街が見える。灰色の雲のから覗く街は、人々に溢れていた。 翼を振り下ろすと、空気が裂かれた。冷たい風の奥に、赤い瞳が爛々と輝いている。 狂気は叫び、雲を振り払い静寂の中に身を寄せた。嵐の前の静けさだろうか。 殺せ。殺…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#7-1

#7 視界。1.魂に再会すると ○● 異常だ。 風を切り空気を凍えさせ、雲の間を縫うように飛びながら、伝説の蒼い光は思っていた。 翼を振り、空を翔るその姿は、まさに伝説の名に恥じないほど優雅で気品に満ちている。 激しく鳴いた。野太い声が雲の中に響…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#6-3

#6 憑依。 3.消失=増殖 ~彼らのために 私たち 旅立つ~ ○● 「ここです。ここで、私はアンノーンに襲われて、不思議な声を聞いたんです」 瑞穂の声を聞きながら、韮崎は探るように辺りを、遺跡の中を見回していた。辺りの壁は、先程の衝撃で多少崩れて…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#6-2

#6 憑依。 2.追求→発見 ~彼らは 意識 察知する力あり 外 拒む~ ○● 「こんな所で、悪いんだがね……」 「あ、いえ。気を使わないでください。私が、なんの連絡も無しに押し掛けたんですから……。こちらこそ、お忙しい中、突然お邪魔して、すみません」 ホ…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#6-1

#6 憑依。 1.接続+授与 ~私たち一族 ことば 此処に刻む~ ○● 鳥ポケモンのけたたましい鳴き声が、国道36番線沿いのポケモンセンターに朝を告げる。窓から注ぐ陽光の光を浴びながら、瑞穂はパソコンのディスプレイを見つめていた。 キーボードを打つ…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#5-3

#5 妖魔。 3.晒される羞恥 ライチュウの背中からは、バチバチと電気が弾けている。その気になれば、チエの身体は、電撃で弾け飛び、黒こげにされてしまうだろう。そんな孫の泣き声を聞き、老人は、それまでの弱腰が嘘のように怒鳴った。 「おまえら、あ…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#5-2

#5 妖魔。 2.愚かなる暴挙 明日の幻影は、夢のままで消えて。 残された希望、涙に、溶けこむ。 忘れたいと思う気持ちだけ、憎悪、呼び覚ます。 燃える荒野で、出会った君は、狂い、吠えたてる。 それだけ、これだけ、どうしたかな。 あれだけ、それだけ…