水面に浮かぶ古き書庫

いろいろ書いたりとか

2019-06-20から1日間の記事一覧

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#3-2

#3 姉妹。 2.再会は涙の予兆 彼女が見た最期の風景は、透き通った青空だった。 「わぁ……、きれいな……青空だね……」 彼女が呟いた瞬間、自分の背骨が粉々に砕ける音が、耳に響いた。続いて、頭蓋が崩れ、頭皮が弾け、鮮やかなピンク色をした脳味噌が辺りに…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#3-1

#3 姉妹。 1.秘事は青空に消え 月の光を浴びながら、少女は物思いに耽っていた。 滑らかで雪のように白い肌が、より一層、白色を帯びている。強すぎず弱すぎず、汚れた下界を優しく照らすその光は、物事を考えるときには最良の光だった。 少なくとも少女…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#2-4

#2 傷痕。 4.去りゆく勢い 「お姉ちゃん! そんなとこで寝てたら風邪ひくで!」 後ろから関西弁の女の子の声が聞こえてきた。その声は大きく、瑞穂を現実の世界に引き戻すのに充分すぎる程の音量だった。瑞穂は目を覚ました。 後ろを振り向くと、7歳く…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#2-3

#2 傷痕。 3.交錯する辛い思いで 体中の体液が、吹き出してしまうのではないだろうか。 そう思えるほどに赤い体液は、鮮血は激しい勢いで瑞穂の胸から噴きだしていた。全身を駆ける痛みの原因を確かめるため、瑞穂は自分の胸を恐る恐る見やった。 瑞穂の…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#2-2

#2 傷痕。 2.決別は鮮血と共に 朝の心地よい日差しが、窓からそそぎ込んできた。 眩しい光を受けて、瑞穂は目が覚めた。ベッドから半身を起こして、深く息を吸い込む。そこで瑞穂は、昨日の夜にアカネの好意で、コガネジムに泊めてもらった事を思い出し…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#2-1

#2 傷痕。 1.闇に堕ちた街 どんなに美しい輝きをもつ宝石でも、光がなければ輝くことはできない。どんなに他の景色よりも際だって見える黄金でも、闇の中にあっては、すべて色の無い塊でしかない。そんな形容は、この街、コガネシティにもあてはまる。 …

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#1-2

#1 秘密。 2.偽りの希望 自分を呼ぶ声。呼びかける声。ひどく懐かしい、記憶の奥底にしまわれた声。その呼び声に瑞穂は瞼を開いた。射し込んでくる光。感覚の無い胸元に、暖かみが甦る。 瑞穂は目の前に佇んでいる人影を見つめた。薄青色の幻想の中で、…

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#1-1

#1 秘密。 1.満月の夜に 強くても、力がなければ意味がない。 力があっても、強くなければ意味がない。 ○● 少女は夢を見ていた。 夢の中では、荒廃した大地が広がっていた。空は闇に覆われ、月は見えない。無数の流星が光だけが見える。その光は次々と地…