水面に浮かぶ古き書庫

いろいろ書いたりとか

ポケモン二次創作小説『刹那の夢と嘘の玩具』#14-4

#14 愛憎。
  4.嘘の玩具

 

「壊す? 私を? 馬鹿な。私はもう、とっくに壊れてる。お前に壊された。今の私は、お前を殺すことしか頭にない、ただのガラクタ」
 ハンドキャノンを銃口をカヤへと向けたまま、氷は静かに言い放った。少女の口許からは、細く長く鋭い牙が覗き、牙は少女の唇に食い込んでいる。間近で氷の言葉を聞きながら、噛みしめられた唇を眺めながら、瑞穂はそこに宿った深い憎しみを感じ取っていた。
「壊れてなんかいないわ、氷。だって、あんたは帰ってきた。それに、あんたにはまだ、身体も意志も感情も残っている。私が望んでいるのは、すべてをバラバラに粉砕することだもの」
 カヤは両腕を広げ、力説した。自分へと突き付けられた銃口が見えていないのではないかと思えるほどに、落ち着き払っている。冷静であるが故に、彼女の内に潜んでいる狂った何かが、浮き彫りになっていた。
「私はあんたが好きだった。可愛かったし、何より素直で健気だった。だから、あんたを眺めるのは楽しかった。泣いているときも、笑っているときも、そうやって私を睨むときも、あんたの瞳は真っ直ぐで、一片の濁りもなかったわ」
 氷は引き金に指をかけた。黒いトリガーに触れる、少女の白い指先に躊躇いは無かった。
 ハンドキャノンと氷の横顔とを交互に見据え、瑞穂は胸に手を当てた。早まっていく自分の鼓動と、背後で自分を支えるリングマの鼓動が同時に聞こえた。目の前で静かに佇む氷の眼差しは、カヤの言う通りに真っ直ぐで濁り無く、水晶のように純粋だった。
「黙れ――今更、私を惑わそうとしても無意味よ」
 氷は静かに言い放った。引き金は引かれた。銃口から火と煙が吹いた。銃声が鳴り響き、カヤの頭部へと弾丸が飛んだ。氷の身体が、反動で後ろへと下がる。
 カヤの顔が吹き飛んだ。余裕に満ちた表情が砕け散っていた。瑞穂は息を呑み、消し飛んだカヤの身体を見つめた。そして、驚きに目を見開いた。
「血が出ない? どうして――」
 瑞穂は叫んでいた。カヤの身体から、吹き飛ばされた筈の首から、鮮血が迸ることは無かったから。ミルとゆかりも同様に驚き、人形のように棒立ちになった、カヤの首のない身体を眺めていた。
 目を細め、氷はハンドキャノンを強く握り締めていた。手に汗が滲み、細く柔らかい指先をねっとりと濡らし、雫となって滴り落ちている。
 氷がトリガーを引き、カヤの頭部を撃ち抜いても尚、降り注ぐ異様な狂気は消えることは無かった。むしろ先程までよりもさらに大きく、激しく胸元を締めつけていた。少女の心を締めつける何かが軋む。そしてその軋みは、白煙の中から木霊す一言によって、決定的なものとなった。
「そんな銃で、私は殺せないって言ったでしょ。私の可愛い、氷ちゃん」
 握り締めていた銃が落ちた。氷の指先が震えていた。雪のように白い頬が、青くなっていた。
 氷と瑞穂の視線の先で、首のない身体が喋っていた。空気が抜けるように、首のない身体は縮んでいく。嘲るような楽しそうな言葉と同時に、首の傷の断面から紫色の毛髪が伸びた。それは氷の美しい長髪と酷似していた。
「まさか、あの人も遺伝子を?」
「そう――みたいね」
 震え続ける右腕を左手で握り締めながら、氷は瑞穂の言葉に頷いて見せた。
「そこの化け物と、一緒にしないで欲しいわね。私は人間よ。ただし、普通の人間とはちょっと違う」
 カヤの身体から、首が生えた。艶めかしい紫色の長髪が背中を流れる。そして、声がした。カヤの声でも、氷の声でもない、別の声が。女の美しい声が。
「これでも、私を殺せる? あんなに優しくしてあげたのに。励ましてあげたのに」
 澄んだ声だった。氷の鈴の音のような声に、似ていた。
「どういうこと? これは――」
 氷の細い腕が、だらりと垂れた。細めていた瞳は驚きに見開かれ、微かに涙が滲んでいた。強く噛みしめられた唇は力を失い、小刻みに震えている。
「説明してほしいの?」
 女の声は訊いた。頷くでもなく、言葉を返すでもなく、氷は呟いた。
「姉さん――?」
 紫色の髪を掌で撫でつけながら、女は立っていた。その顔立ちや体型は、既にカヤのものではなく、むしろ氷に近かった。だぶだぶになった衣服を煩わしげに振り払い、女は少女達へ向けて微笑んだ。
 女の微笑みに、瑞穂は既視感を感じた。不可解な氷の言葉の意味を探る内に、その既視感は曳光弾のように尾を引いて戻ってきた。姉さん? 姉さんって、まさか――
 目の前で笑う女の正体に気づき、氷の動揺の意味に気付き、瑞穂は女の顔を凝視した。少女の背筋を冷たい感情が、絶望の一閃が裂いた。
 一位カヤは、氷の姉である射水 冷へと姿を変えていた。
「どうしたの? 私よ、氷」
 冷の姿をした女は、氷へと話しかけた。
 氷は首を横に振っていた。震える指先を胸元に押しつけている。あんぐりと開かれた口からは言葉も出ず、青い唇はひきつっていた。女との関わりを避けようとするかのように、少女は少しづつ後ずさった。
「どうして、そんなに嫌がるの? 私のことが解らない? あんたの姉の、射水 冷よ」
「お前――」
 目に涙を浮かべながら、氷は言った。
「ずっと――私を騙してたのか。姉さんの姿を偽って、私のことを騙してたのか?」
 呻きにも似た、悲痛な氷の言葉に、瑞穂は目を伏せた。
 途端に女の仮面が割れた。氷に良く似た、大人しそうな顔が、凶暴で残忍な笑みへと歪んだ。射水 冷の皮を被ったカヤの表情がそこにあった。
「そうよ。私は、あんたの姉の遺伝子を組み込まれてる。だから、自由にあんたの姉の姿に変わることができるのよ」
「でも――」瑞穂は顔を上げた。「一体、何のために、そんな」
「楽しいから」
 女は笑った。即座に吐き出された回答は、瑞穂の問いに対する答えでは無かった。次から次へと紡ぎ出される言葉は、氷へのみ向けられていた。
「ただ殴ったり、蹴ったりするだけじゃ面白くないから。裸にして放尿させてみたり、尻の穴に爆竹突っ込んでも、すぐに飽きちゃう」
「黙れ――」
 氷の頬は紅潮していた。それが怒りによるものなのか、恥ずかしさによるものなのか、瑞穂には判別できなかった。それより、この期に及んでも氷を玩具のように弄ぶカヤに対して、憤りよりも先に、底知れぬ恐怖を抱かずにはいられなかった。
「泣き叫いていたっけ。白いお尻から火花を散らしながら、ヒィヒィのたうち回ってたわね。可愛かったわよ」
「黙れ!」
 床に落ちたハンドキャノンを拾い上げ、氷は発砲した。女の腕が弾けた。銃声が響きわたるよりも先に、女の身体は、空中へ飛んだ。震撼する空気に、女の身体は何度も跳ね上がった。
 氷は続けて発砲していた。涙の滲んだ瞳を細めながら。反動で少女の身体が揺れる。引き金が、パチンという乾いた音を、弾切れの音を奏でても尚、少女の身体は揺れ続けていた。全身が震えていた。
 小刻みに震えを繰り返しながら、氷は床に座り込んだ。拳銃を握り締めたまま少女は項垂れ、声にならぬ嗚咽を漏らした。
 蹲った惨めな氷の背中を眺めつつ、ミルとゆかりは顔を見合わせていた。沈鬱な2人の表情を横目で見比べながら、瑞穂はそっと氷の下へと近づいた。氷の背中に触れ、撫でるのには躊躇いがあった。下手に刺激しない方がいいのかもしれない。かける言葉も見つからず、ただ呆然と瑞穂は立ち尽くしていた。
「だから、無駄だって。私は、あんたよりも強力な自己再生能力を持ってるんだから」
 女の声が、静まり返った空間に響いた。瑞穂と氷は思わず顔を上げ、女の方を見やった。女は、のそりと起きあがっていた。銃弾を受けて消し飛んだ部分は既に再生していた。何事も無かったかのような微笑みを浮かべ、話を続けた。
「この感覚が良いのよ」
 主語を欠いた女の言葉の意味を、瑞穂はとっさには理解できなかった。だが、泣きはらした氷の横顔を見やった瞬間、少女は胸を締めつけられるような痛みを感じた。女の言葉の意味が、朧気ながらも理解できたから。
「殴っても犯しても、すぐ飽きちゃうのは、私が氷の事を知らないからだ、って気付いたのよ。だから、私は氷の事を知ろうと思った。私には見えない、見ることのできない氷の部分を知りたかった。でもね――」
 女は天井を見上げた。
「氷は、私の前では怯えるだけだった。何も教えてはくれなかった。だから、私は時雨に頼んだのよ。私を、氷が信頼する姉の姿にしてくれるように」
「そして――」氷は頬を伝う涙を拭おうともせずに、女を見据えた。
「姉さんの姿形を偽って、私を騙した」
「そう。あの時の氷は純粋で、誰かを――特に身内ならなおさらだけど――疑うということを知らなかった。冷の姿をした私のことを、姉だと信じて、あんたは無防備な姿を晒した」
 仮面のように動かない氷の表情に、哀しみが浮かび上がっていた。瞳に溜まった涙を拭う素振りすら見せないのは、強がりでは無く、哀しみに打ちのめされて身体が動かせないためではないか、と瑞穂は思った。
 殴られ、蹴られ、犯されても、死ぬことを許されなかった少女。苦痛と絶望に満ちた少女の唯一の救いは、時折、牢獄に姿を見せる姉の姿だった。
 親を、故郷を、感情を失った少女は、姉にのみ心を許した。苦痛を訴え、涙を流す少女を姉は慰めた。檻の隙間から優しく手を伸ばし額を、頭を撫でる。囁くような優しい言葉に、少女は誰にも見せることのない、微笑みを浮かべる。姉も同様の微笑みを返す。
 だが、それは姉ではなかった。姉の皮を被った、悪魔だった。悪魔は少女を殴り、切り裂き、砕き、犯していた。泣き喚く少女の姿を嘲る裏側で、悪魔は姉の皮を被り、偽りの温もりと愛を少女に与えていた。
「だから言ったじゃない。あんなに可愛がってあげたのに、って。なのにあんたは、私のことを憎んでる。怨んでる。殺そうとしてる。でも、それは逆恨みよ。私は、あんたの本当の姉よりも、あんたを愛してるし、あんたを可愛がってた」
 嘘だ。すべて、嘘だった。少女は、女の嘘の玩具にされていたのだ。優しい言葉も、頬を通じて感じた掌の温もりも、一片の汚れも無いと信じていたあの笑顔も、すべて嘘だった。偽りだった。
 みんな嘘つきだ。少女は、氷は握り締めた拳銃を見据え、錯乱する頭を横へ振った。みんな、みんな――自分だけ残して、さっさと死んでしまった本当の姉も、隣で気の毒そうに自分を見下ろす少女も、みんな嘘つきだ。よってたかって、私を騙して苦しめて、それでも私は死ねないから、死なない身体だから、私はずっとずっとその嘘を信じて、馬鹿みたいに、もっと苦しむんだ。
「氷ちゃん――」
 棒立ちのまま、瑞穂は呟いた。触れることも言葉をかけることもできなかった。
「あんたの拠り所はもう無い。私が壊してあげたから。私が、今まであんたを生かしてあげてたんだから。醜い化け物のあんたをね」
 君は人間では無いから――何処かで訊いた少年の言葉が脳裏を掠めた。人は生まれながらに罪人だ。連鎖的に浮かび上がる記憶。目の前で微笑む少年。掌で溶けていく雪の感触は冷たい。冷たい。冷たい。
 氷は眼前で震える拳銃から眼をそらし、顔を上げた。女の――姉の皮を被ったカヤの笑みが映った。同時に、冷たい掌の感覚が甦った。横たわる姉の屍体に触れたときの感触だった。
「姉さんは死んだ――」
 氷は自分に言い聞かせるように呟いていた。瑞穂は眉を潜め、氷の言葉に聞き入った。
「姉さんは――本物の姉さんは死んだ。自殺した。どうして、姉さんが自分で自分を殺さなければならないのか、今になって、やっと解った気がする」
「あんた何を言ってるの? ショックで、おかしくなった?」
「姉さんは知っていた。そして、私が真実を知ることを恐れていた。だから、死んだのよ。私が本当の事を――姉さんが偽物で、私を弄んでいたことを――知っても、大丈夫なように」
「意味が解らないわ」
 女は首を傾げた。微笑みは消えない。氷は眼をそらさずに、続けた。
「誰にも理解できない。私と、姉さんにしか解らないかも知れない」
 胸元に拳銃を抱きかかえ、氷は立ち上がった。先程まで微塵も感じられなかった殺気が、氷の身体から再び漲っていた。
 ただならぬ殺気に危険を感じたのか、リングマは瑞穂の小さな身体を抱きかかえた。太く暖かい腕の隙間から、瑞穂は氷を見つめ続けた。氷は拳銃を前へと突きだしていた。そして、目を細めて口許に小さな笑みを浮かべていた。
「姉さんは死んだ。だから、もう姉さんは何処にもいない。姉さんは、私の支えでも拠り所でもない。もう私は、姉さんがいなくても生きていける。いや、姉さんが死んでから、私はそうやって生きてきた」
「何を言いたい? あんたにとって本当の姉は、同一の母体から生まれたという意味しか――それすらも怪しいもんだけど――持たない筈よ。あんたに愛と温もりと生きる希望を与えてあげたのは、この私よ!」
「違う」
 鈴の音が、澄んだ声が反響した。氷は静かに女を制した。女は瞳を見開き、今にも噛みつきそうな形相で氷を睨み付けていた。
「お前は」
 途切れ途切れに放たれた言葉は掠れていた。氷の薄暗い微笑みの隙間に、瑞穂は光る筋を見つけた。拭われぬ涙の跡だった。滴っている。細めた瞳から、涙が止めどなくこぼれ落ちている。
「私に愛を与えたつもりかもしれない。そうやって、私を弄んだつもりかもしれない。事実、私はお前の自作自演に騙された。姉さんの姿をしたお前を信じてしまった。でも、そんな偽りの愛は、姉さんが殺してくれた。自殺することで、私の中にある姉さんへの幻想と傾倒とを破壊してくれた。姉さんは私の為に死んだ。でも、お前は私の為には死なない。その違いは大きい」
「だから?」
「お前のまやかしは、もう効かないと言っている。私は、お前を殺せる」
 女は口を歪め、氷の言葉を笑い飛ばした。
「あんたに、私は殺せないわ。見たでしょ? 私の自己再生能力は、あんたよりも優れているのよ。誰にも私は殺せない。誰にもね」
「いや――」氷は瞳を閉じ、首を横へと振った。「方法はある」
 即座に弾倉を交換し、氷は女へと発砲した。だが、女は踊るような軽やかさで弾を避け、氷へと腕を突きだした。その腕には拳銃が握られていた。氷の持つ拳銃に似た、ハンドキャノンだった。
 瑞穂は小さな悲鳴をあげた。一瞬、何が起きたのか理解できなかった。リングマの腕が、ぐっと少女の身体を締めつけて朧気な視界を遮った。遠くから銃声が響いた。すぐ側で何かの弾ける音がした。夥しい液体の迸る音が聞こえた。瑞穂は、緩んだ腕の隙間から抜け出し、氷の方へと視線を向けた。
 氷の掌が柘榴のように裂けていた。傷の断面からは赤黒い鮮血が吹きだし、肘の骨が除いている。床に落ちた拳銃は鮮血に染まっていた。
「調子に乗るな。いつまでも大人しく撃たれてる私じゃない。それに、銃の腕前は私の方が上なのよ」
 女は言った。続けて銃声が鳴り響き、氷の身体は何度も何度も宙へと跳ね上がった。
 銃声が鳴り止み、少女は倒れた。少女は氷は床に突っ伏したまま、苦痛に顔をしかめていた。身体のあちこちに、虫に喰われたかのような穴が空いている。口からは舌が伸び、血の混じった涎が垂れていた。
 瑞穂は肩を掴んでいるリングマの腕を振りほどき、氷のもとへと駆け寄った。ミルとゆかりは顔をひきつらせ、血みどろになった氷の身体から、思わず目を背けている。
「認めなさいよ。私の愛を」女は叫いていた。
「そうやって変な理屈で誤魔化さないで、私の愛を認めなさいよ。どうして、そんなに冷静でいられる? もっと、壊れてよ。もっともっと、泣き喚いてよ! 私に縋り付いて、私に救いを乞いなさいよ!」
 氷は応えなかった。床にへばりついたまま、赤い霧のような息を吐いていた。ただその首は、いやいやをする子供のように左右の動きを繰り返していた。
「それぐらいにしておけ」
 女の背後から声が響き、白衣を着た男が姿をあらわした。男は若く、手の甲に火傷のような傷痕が見えた。瑞穂は男の姿を横目で見やり、彼の名を思い出した。時雨という名の、組織の研究者。
 時雨は冷の姿をしたカヤを一瞥し、瑞穂を睨み付けた。瑞穂は彼を睨み返した。時雨は口の端に力を込めた。微笑んでいるかのようの表情だったが、その瞳までは笑っていなかった。
「カヤ。氷の相手はもういい。それよりも、洲先瑞穂を殺れ」
「嫌よ。私は氷と遊びたいの。私は、氷とだけ遊びたいの。さぁ氷、私の所へおいで。慰めてあげる。痛いんだよね? 悲しいんだよね? 私が助けてあげるから!」
 氷は、半ば反射的に首を振り続けていた。時折、惨めに砕けた身体がビクンと痙攣する。その度に氷は瞳を搾った。目尻から涙がこぼれる。白い頬を滑るように流れ、雫はだらりと伸びた舌へと吸い込まれた。
「痛いんでしょ? 早く化け物の姿になれば楽になれるのに。それとも、お友達の前であんな醜くて臭くて汚らわしい姿を晒したくないのかしら?」
「私は人間じゃない。でも、化け物でもない。私は――」
「私の命令が聞けないのか? カヤ」
 少女の言葉を遮り、冷たい口調で時雨は呟いた。
「しつこいわね。今、私は忙しいの。これ以上、私の邪魔をしたら――」
 次の瞬間、女の言葉は途切れた。女の身体は凍りついたように止まった。その顔は青ざめ、額には汗が滲んでいる。時雨は見下すように女の固まった表情を見据え、やがて言った。
「そろそろ潮時だとは思っていたが、よもやこんな状況で使うことになるとは」
 カヤは苦しそうに身を捩り、時雨へと向き直った。
「どういう意味よ! それに何なのよ、これは! 身体が動かない――私の身体に、何をした」
 時雨は手に握り締めた小型の機械をカヤへと掲げて見せた。カヤは口を開いた。だが、彼女の声は聞こえなかった。その沈黙が驚きを帯びているのを、瑞穂は肌で感じ取った。
「お前の本当の姿になる時が来たな」
「本当の姿? 何よ、それ。私は私だ。本当の姿なんて――」
「違うんだよ。お前は、お前が最も蔑んでいた化け物と、射水 氷と同じだ。人間ではない。私が造り出した、生体兵器だ」
 カヤは首を横へと振った。だが、その否定の動きとは裏腹に、彼女の瞳は爛々とした輝きを湛えていた。イグゾルトの証である、真紅の光だった。
「知らないわよ、聞いてないわよ、そんなこと。時雨、あんたいつの間に、私の身体を――」
 女の顔は既に人間のものでは無くなっていた。前歯が異常に伸び、鼠にように歪んでいた。透き通るような声は濁り、白い肌を茶色い体毛が覆い始めている。
射水 冷の遺伝子と自己再生能力をお前に付加する際に、特殊電波発生装置を埋め込ませてもらった」
「嘘だ。それなら、私は人間の筈だ」カヤは叫いた。「人間は、特殊電波発生装置の影響は受けないはずだ。辻褄が合わない」
「簡単なことだ。射水 冷の遺伝子に、既にラッタの遺伝子が組み込まれていたのだよ。ラッタの遺伝子の形質は、冷にも、お前にも発現しなかったようだが、特殊電波によってその形質が発現することは十分に考えられる。気付かなかったか? お前が自在にポケモンを操れるのも、お前の中に潜んでいたラッタの遺伝子が影響していたんだよ」
 カヤの瞳が大きく見開かれた。絶望に満ちあふれた紅い瞳は、眩い閃光に突き破られるかのように破裂した。鮮血が女の顔を汚した。コンタクトレンズを失った近視の人間のように、カヤは四つん這いになり、両手で地面を探るような仕種を見せた。動く度に瞳からこぼれる鮮血が床へと垂れた。
 口は裂けていた。カヤは譫言のような呟きを繰り返していた。だが、時折人間の声ではない、獣の咆哮が狭い通路に反響した。女の意識は、獣の意識に浸食されていた。
「嫌よ。嫌だっての。私は化け物じゃない! こんな、こんなこと認めない! 私は、あんな醜くて臭い姿にはなりたくない。やめて――やめろよ。やめてよ、時雨! お願いだって!」
 破裂した瞳のあった窪みから、獣の眼が覗いた。全身の皮膚が張り裂け、濁った茶色の体毛と腐敗臭を発する皮膚と風船のように膨れあがり、女の身体を包み込んだ。
 女は、人間の皮を剥ぎ、巨大な鼠の化け物へと姿を変えていた。凶悪で暴虐な顔には知性の欠片も無かった。女の声は既に聞こえなかった。瑞穂に聞こえるのは、特殊電波”リリィ”の内に秘められた、野獣の如き破壊衝動からくる呻きだけ。だが瑞穂には、カヤの残虐な心がそのまま具現化して、彼女の身体を乗っ取ったように思えてならなかった。
 瑞穂は横目で、ミルとゆかりの方を見やった。
「何あれ、あの姿は」
 ミルは放心しきった表情で呟いていた。ゆかりは、ミルの身体をしっかと抱きしめ、汚らわしい獣から、ひたすら眼を逸らしている。
 呻きを吐き出し終え、鼠の姿をした獣は吠えた。邪悪な咆哮に、空気が震撼した。
「腹が減っているようだな」
 頬に飛んだカヤの鮮血を手の甲で拭うと、時雨は呟いた。手にしている小型の機械を操作する。通路の天井が開き、そこから鎖に縛られている男が、法柿が吊り降ろされた。
「法柿。どうして――」
 氷はボロ布のような身体を捩って半身を起こした。法柿の顔は苦渋に歪みきり、全身には打撲のような痕が痛々しげに残っている。悔しげに呟かれた言葉も、痛みに掠れていた。
「悪いな、氷。ミスっちまった。まさか、時雨まで――」
 法柿の顔が鋭く左右に弾けた。これ以上余計な事を喋るなと言いたげな表情で、時雨は法柿を殴りつけていた。法柿の顎の骨が砕ける音が響き、彼の声は掻き消された。
「餌だ。カヤ」
 下品な雄叫びをあげ、カヤは法柿の下半身に食い付いた。法柿は金切り声を発した。悲痛な叫びが辺りに響き、瑞穂は思わず眼を背けた。だが、少年の肉と骨とが引きちぎられ、一緒くたに掻き回される生々しい音からは逃げられなかった。
「殺すな――法柿を殺さないで――」
 氷は力なく項垂れていた。幾つか指の欠けた掌で床を引っ掻きながら、少女は身悶えていた。
 法柿の悲鳴は長くは続かなかった。断末魔の叫びごと、法柿は獣に喰われていた。後に残ったのは、鮮血のこびり着いた鎖だけだった。無惨に天井から垂れ下がる鎖は、悲鳴の反響で左右に揺れていた。
「裏切り者には死んでもらわなければな。逃げ隠れていれば良いものを、わざわざ私を殺しにやってくるとは、愚かなものだ」
 両腕についた血を意地汚く舐め回す獣を蔑むように眺め、時雨は言った。
「カヤ、命令だ。洲先瑞穂と、裏切り者の射水 氷を喰い殺せ」
 獣は時雨の言葉に呼応し、咆哮した。真紅に輝く瞳を瑞穂へと向け、異常に伸びきった前歯を突き出す。全身の体毛が逆立っていた。獲物を狙う獣の仕種には、人間としての理性とかそういった諸々のものが抜け落ちているかのようだった。
「ここで失礼するよ。私も暇では無いのでね。いつまでも、お前達のような子供に構っていられないのだよ」
 時雨は、獣が瑞穂達に飛びかかるのを確認すると、背を向けて足早に歩き出した。
「待ってください!」瑞穂は叫んだ。
「あなたに聞きたいことがあるんですよ。あなたは一体、何をしようとしているんですか? 何を隠しているんですか? 何のために、こんな非道い事をするんです!」
 瑞穂の問いかけに時雨は答えず、ただ一度だけ、肩越しに鋭い眼差しを向けただけだった。時雨は冷たい足音を響かせて、立ち去っていく。瑞穂は尚も声を張り上げたが、少女の声は、立ち去ろうとする彼の背中は、上空から踊り来る獣の巨体によって阻まれた。
 鼠の姿をした獣は口を大きく開き、鋭い前歯を瑞穂へと突き立てた。瑞穂は咄嗟に後方へと身を翻し、自分へと振り下ろされる前歯を避ける。
 獣は少女の姿を追いかけ、顔を上げた。瞳から漏れる紅い閃光が、床へと着地する瑞穂を、そこに生まれる一瞬の隙を捉えた。獣は殺意を剥き出しにしたまま、前傾姿勢をとった。
「お願い、リンちゃん!」
 突っ込んでくる獣を真正面から見据え、瑞穂は叫んだ。その声に呼応し、計ったようなタイミングでリングマはその巨体を動かした。
 握り締められたリングマの拳が、獣の頬を鋭く抉る。獣は殴られた反動で頭から壁へと突っ込んだ。轟音と共に土埃が獣を覆い隠すように舞う。リングマは両腕を広げ、相手の反撃に備えた。
 土煙を振り払うように飛び出し、獣はリングマへと牙を剥きだした。鋭い前歯が、牙がリングマの左上腕に食い込んだ。リングマは腕を振り回し、獣を壁へと擦り付ける。獣は牙を抜く、その一瞬の隙を突き、リングマの長い爪が、獣の顔面を切り裂いた。リングマは尚も、獣の身体を斬りつける。獣は壁に抑えつけられ、夥しい鮮血を吹き出し始めた。
 その時だった。不意に身体の支えを失い、リングマは倒れた。獣はリングマの巨体を跳び越えると、瑞穂へと詰め寄った。
「リンちゃん、どうしたの?」
 リングマは立ち上がり、瑞穂へと頷いて見せた。僕は大丈夫だ、という意志表示だった。瑞穂は頷き返す、と同時にリングマの足もとを見つめ、驚愕に口を開いた。
「リンちゃんの立っている場所――腐ってる」
 リングマの立っていた床は、腐敗して陥没していた。突然、身体のバランスが崩れた原因は、腐った床にあったのだ。
 間髪入れずに獣は、瑞穂へと飛びかかった。リングマは腕を振り上げ、地面を打ち抜く。鋭い地響きと共に衝撃波が地面を伝わり、獣の足下で弾けた。岩石封じである。突きだした岩は獣を包み込み、その身の自由を奪った。
 だが、獣を覆っていた筈の岩は崩れた。発砲スチロールのようにボロボロと、始めから脆かったかのように崩れた。岩石の裂け目から覗く獣の瞳は、一段と妖しい輝きを増していた。
「まさか、この人のex能力は、自由に物を腐らせることができる能力?」
 天井が軋んだ。リングマは即座に上方を見やった。天井の一部が黒ずんでいた。やがて、その部分は剥がれ落ち、瑞穂へと向けて落下した。彼は腕を伸ばし、落下物を払い飛ばした。
「あ、ありがとう、リンちゃん」
 身を強張らせて瑞穂は言うと、払い落とされた天井の破片を見やった。破片は腐食しきっていた。
「どうやら、間違い無いみたいだよ」
 ゆかりを庇うように身を屈め、ミルは呟いた。首からかけた水晶を掌で包み、指の隙間から漏れる輝きを食い入るように見つめている。
「胸の水晶が――”虹の瞳”がそう言ってるからさ」
「どういう事?」
「この虹の瞳と深海の涙は、exって特殊能力と、何か繋がりがあるんだと思う。崖から落ちても私が死ななかったのも、リリィって人の意識が生き続けて、他のポケモンの精神に介入する能力を身につけていたのだって、水晶の影響を受けたから。だから感じるのさ。あの化け物の持っている能力は、生物以外の物を自在に腐らせる能力”腐敗”」
 ミルの言葉を聞きながら、瑞穂は獣を見据えた。少女と獣は正面から対峙している。獣は全身の毛を逆立て、今にも少女に飛びかからんと、牙を剥きだしていた。
 リングマの攻撃によって受けた深い傷は癒えていた。常識を遙かに凌駕する自己再生能力によって、頭部に刻まれた傷は消えていた。
「”腐敗”の能力も厄介だけど。一番の問題は、あの人の再生能力だね。どんな攻撃でも、あの人には通用しない」
「それなら――」
 口から夥しい鮮血を滴らせ、氷は言った。苦しそうに身を捩らせつつ首を振り、頬を流れる涙を落とすと、少女は赤く染まった牙を軋ませた。
「私に考えがある。私が合図をしたら、リングマに破壊光線を発射させて。それだけでいい」
「でも、リンちゃんの破壊光線は当たらないと思うよ。あの人は素早いし、”腐敗”の能力でまた足もとを狙われたら、かえって危ない。室内なら尚更だよ」
 氷は瑞穂の言葉には応じず、血塗れの身体を起こした。射るように鋭い瞳で獣の姿を凝視し、左腕を獣へと伸ばした。
「氷ちゃん? まさか――」
 氷の身体が膨らんだ。白く細い腕に紫色の鱗が浮かび上がった。噛みしめられた牙が長く鋭く伸び、少女のあどけなく澄んだ瞳が大きく見開かれ、そして破裂した。透明な液体が少女の顔を濡らす。ぽっかりと空いた窪みから、蛇の姿をした触手が伸びた。
 血に汚れ、ボロ布のような黒いワンピースが、少女の身体から溢れるように伸びる触手に突き破られた。雪のように白い少女の裸体は、ひしめき合う無数の触手に包まれた。呻るような咆哮が響く。射水 氷の小さな身体は、すでにそこにはなく、蛇の触手を全身から伸ばす、異形の巨体が佇んでいた。
「何これ?」
 呆然とミルは呟いた。少女が”化け物”へと変貌した事実を飲み込めていないようだった。縋るように瑞穂の表情を伺うが、瑞穂は何も言わずにミルから眼を背け、異形の姿へと視線を移した。
 背後から倒れる音が聞こえた。ミルが気を失い、倒れた音だった。ゆかりはミルの身体を揺さぶるが、反応は無かった。
「私は人間じゃない」氷は呟いた。
「でも、瑞穂ちゃんは、私のことを人間だと言ってくれた。こんな醜くて汚くて臭い私を。嬉しい。感謝している。だけど、それは瑞穂ちゃんが私のことを知らなかったから。私のしてきたことを知らなかったから。これで、瑞穂ちゃんは私を軽蔑する。私が人間じゃないと言う」
 異形は、瑞穂へと飛びかかろうとする獣を抑えつけた。無数の触手で獣の身体の自由を奪う。触手の一本が、獣の頭部を突き刺した。途端に、獣の瞳は輝きを失う。触手が、頭部に植え込まれていた特殊電波発生装置を貫いたのだ、と瑞穂は直感した。
「今よ、瑞穂ちゃん」
「でも、氷ちゃんが――」
「早く!」
「う――うん。リンちゃん、破壊光線!」
 躊躇いがちな瑞穂を押しのけ、リングマは口を開いた。眩い閃光が迸り、破壊光線が発射された。瑞穂は咄嗟に身を伏せた。熱線は狭い部屋を灼き、衝撃波が床を抉る。爆風が少女達を弄ぶように吹き飛ばした。

 

○●

 獣の破片が四散していた。異形の身体が飛散していた。
 細切れになった獣の身体が、微かに動いた。周りに散らばった破片を吸収し、身体を再生させていく。
 触手が伸びた。異形の触手。打ち捨てられたように転がる氷の首から、無数の触手が伸びていた。触手は獣の破片に噛みついた。獣の身体は、それを拒むように痙攣した。
 氷は首の断面から触手を伸ばし、触手を手足のように用いて、獣の肉片へと歩み寄った。氷は口を開いた。獣の肉を、小さな口へと含む。噛み砕く。少女は泣いていた。泣きながら、獣の腐敗臭漂う肉片を貪っていた。湿った音が、少女の口から漏れる。自分の臭いと獣の臭いが混ざり、氷は肉を喰らっては何度も異臭に咽せて嘔吐した。他の触手は、見る間に獣の肉片と、自分自身の破片を喰い漁る。
 獣は、一位カヤは死んだ。正しく言うならば、一位カヤを喰った獣は、氷に喰われた。どれほど優れた自己再生能力を有しようと、喰われ吸収されてしまえば、再生はできない。
 瑞穂は身体に降り注いだ砂埃を払おうともせず、氷の姿を見つめていた。呆然と、食い入るように。その瞳には涙が滲んでいた。だが、少女は涙を流すよりも先に、吐いた。その場で、げえげえ言いながら。遅れて、目尻から涙がこぼれた。
「これでも、私を人間と言える? こんな姿の私を、人間と言える? でも、私は化け物じゃないんだよ。昔は、生まれた時は、人間だったんだよ? 普通の女の子だったんだよ? どうして、こんな姿になったんだろうって、今思うの。今までは、そんな事、深く考えなかったのに、あの女を殺した途端、なんで今になって、そんなこと考えるんだろう――」
 瑞穂は汚れた口許を布で拭い、そっと氷へと近づいた。氷の身体は、既に異形のものではなく、白く小さな少女の裸体として血痕の滲みた床に転がっていた。瑞穂は氷を抱きかかえた。氷の身体に体温は無く、冬の空気と同じくらいに冷たい。
「よく解った。氷ちゃんの言いたいこと。確かに、氷ちゃんは人間じゃないかもしれない。でも、私は、氷ちゃんのこと好きだよ。氷ちゃんは優しい人だよ。それで良いじゃない。どうして、そんなに拘る必要があるのかな」
「姉さんは、実は本当の姉さんじゃなくて。法柿も死んじゃった。私には、もう誰もいない。だから、せめて人間でいたい。もう、こんな身体は嫌なの。瑞穂ちゃんだって、さっき私のことを見て、吐いてたじゃない――」
 氷は、瑞穂にしがみついた。嗚咽を続ける氷の声は涙に震え、虚しく響いていた。
「そうだよね、ごめん。でも、私にもわからないよ。どうしたら、氷ちゃんを助けてあげられるのか。綺麗事だけじゃ、誰も救えない、何も解決できない。それなら、どうしたらいいんだろう」
 いつしか氷は寝息を立てていた。泣きながら眠っていた。胸の中で眠る少女の裸体の芯にある冷たさを感じながら、瑞穂はずっと考えていた。どうすれば、どうやれば、この少女を救えるのか。
 だが、どれだけ考えても、無力な自分に、ただ打ちのめされるだけだった。行き場の無い焦燥に、瑞穂は蹲り目を閉じた。
 今はまだ、氷の冷たい身体を抱きしめ、その脆く不安定な存在を放さないようにするしかなかった。放してしまえば、少女の身体は何処かへ、自分の手の届かないところへ消えてしまいそうだったから。

 

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 翌日、少女達は組織のアジトを後にした。
 ミルはぎこちない笑みを見せながら別れを告げた。言いながら、その瞳は恐れるように怯えるように氷を見つめていた。いつまでも、一緒にいるわけにはいかないからさ。あの男が、深海の涙の持ち主が、この近くにいるのを感じるし。言い訳でもするかのような苦しげな口調だった。
 氷は、落ち着きを取り戻していた。だが、表情の無い仮面の下は愁いに沈んでいた。暫く、独りで考えてみる。氷は言った。あの女が死んでも、私の生きる意味が無くなった訳じゃないから。私は、これから何をするべきなのかを、もう一度考えてみたい。
 瑞穂とゆかりは深い雪を踏みしめながら歩いた。時折、吹き抜ける突風が、粉雪と共に冷たい記憶を呼び覚ます。ミルの怯えた視線。氷の、壊れてしまう寸前の精一杯の言葉。
「なあ、お姉ちゃん。これから、どうするん?」
カントーに――トキワシティに行こう。すべての発端である、私達の故郷に」

 奇妙な偶然は重なるもので、別々に散った筈の少女達は、再び交わることになる。それは運命ではなく、棄てられた天使達の種よって。

 

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※本作はウェブサイト「ポケモンセンターin19番水道」にて2007年まで掲載されていたものを

 再公開にあたり加筆・修正・改題したものです。